私のご主人様Ⅲ
「暁、お昼これに玉子入れてもいい?ことねぇ栄養つけないと…」
「分かりました。後でやっときます」
それな俺たちに対して、普段からは考えられない冷静さでてきぱきと琴音の額に張った冷えピタを変えるお嬢に思わず感心する。
琴音にも甘えたりわがままを言うことが多かったお嬢が、琴音の世話を完璧にこなそうとしている。
使用人の世話をお嬢がやるなんて、きっと普通ではあり得ない。でも、お嬢は琴音を大切にしたい気持ちが強いんだろう。
そうじゃなかったらきっと、あんなに根気よく飯を食わせたり、薬を飲ませるなんてしないはずだ。
「…何、暁」
じっと見ていたせいか、お嬢に睨まれた。
思わず否定したものの、疑いの目は離れることなく見据えられ続け、沈黙が痛くなっていった。
「俺たちも軽く食べよう。暁、いいか?」
「あ、はい」
奏多さんの一言で思わずホッとする。
お嬢に止められる前にさっさと立ち上がり、台所に向かった。