私のご主人様Ⅲ

永塚組のほぼ全員の手によって並べられたおかげでいつもより早く支度が終わる。

でも、季龍さんと信洋さんがいないからまだ誰も食べ始めようとはしなかった。

「琴音ちゃん、わりぃんだけど若たち呼んできてくんねぇか?多分若の部屋にいるから」

「コク」

呼びに行った方がいいのかなと思ってたところで平沢さんに名指しされて頷く。

とりあえず急ごう。

廊下を早足で進む。季龍さんはとにかく、信洋さんが来ないってことは2人で話し合いでもしてるのかな?

そんなことを考えながらたどり着いた季龍さんのお部屋の前。少し弾んだ息をなだめ、着物が乱れていないことを確認。

よし。襖の枠の部分をノックしようと右手を上げたとき、中から聞こえてきた声に思わず手が止まる。

今、琴音の父親って言った…?なんの、話…?

息を潜め、そっと襖に寄って耳を澄ませると季龍さんと信洋さんの話し声が聞こえてきた。
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