私のご主人様Ⅲ
「っお前まさか聞いて…」
驚いている季龍さんに駆け寄り、その服を掴む。
「父を見捨てないで!!何でもするからっ!スパイでも、夜の相手でもっ、私をどうしたっていいから、父だけはっ」
「ここちゃん落ち着いて!!」
信洋さんに引き剥がされて急に体の力が抜ける。
そのままずるずる座り込んでうつむいてしまう。震える体をどうすることもできなくなる。
お父さんまでいなくなったら私は1人になってしまう。そうしたら、帰る場所がなくなる。
そんなの、死んだ方がましだ。
「琴音」
「お願いします、父だけは…。お願いします…」
「大丈夫、絶対に見捨てない。だから、落ち着いて。俺を見て」
肩を持たれて恐る恐る顔を上げる。信洋さんは今までに見たことないくらい優しい顔で微笑んだ。