私のご主人様Ⅲ
「ここちゃん、よく聞いて。お父さんが入院してるのは、ここちゃんを失ったショックで倒れたんだ」
「…」
「約束したよね?ここちゃんが生きていることをお父さんに伝えるって。だから、安心して。ここちゃんが生きてる、無事だってお父さんに伝えるから」
頭を撫でられたり、背中をさすられたり、慰められてるって分かってるのに不安は消えない。
なのに、やっぱり涙だけは流れない。怖いのに、寂しくて仕方ないのに、涙だけは流れない。
薄情だと罵られるのだろうか。おかしいって言われるんだろうか。
どんなに殴られても、酷いことを言われても、流れない涙は、父を失いかけても流れない。
どうして?心配をかけちゃいけないお父さんはここにはいないのに…。
ただ震えている私を信洋さんは励まし続けてくれて、何とか立ち上がれる頃にはすっかり時間が経ってしまっていた。