私のご主人様Ⅲ

「平沢さん、琴音ちゃんいじめないでください」

「なんだ奏多~すっかり兄貴面じゃねぇか」

「飲んでないんですからやめてくださいって」

奏多さんが見かねて助けに来てくれたけど、あんまり効果はなかった。

「琴音さん、ここにいたんですか?」

「!」

「田部?珍しいなこっちに顔出すなんて」

突然かけられた声に驚いて振り返ると、苦笑いを浮かべた田部さんと視線が重なる。

あ、そういえば源之助さんに呼ばれてるんだった。

すっかり頭から引っこ抜けていたことを思い出して思わず青ざめる。

平沢さんはタバコの火を消しながら珍しいものを見るように田部さんを見るけど、対する田部さんはうっすら笑みを浮かべるだけだ。

「琴音さん、後のことは私に任せて、旦那様のところへ行ってください」

「!?」

「え、琴音ちゃん親父さんに呼ばれてたんですか」

「えぇ。今朝声をかけました。そうそう、南くんと金瀬くん、今日は臨時休暇を出すと旦那様からの伝言です」

「え?」

「しかし…」

「琴音さんは本日中旦那様についてもらいますので、ご心配なく」

突然のことにいろいろ頭がついていかない。奏多さんと暁くんも顔を見合わせて困った顔をしていた。
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