私のご主人様Ⅲ

車は動き出しているのに目隠しもされない。

外を見ないように気を付けてはいるけど、目に飛び込んでくる景色に気を取られずにはいられなかった。

チラチラと外を見ていると、豪快な笑い声が響き渡る。驚いて顔を向けると、源之助さんがお腹を抱えて笑っていた。

「琴葉ちゃん、今日は特別だ。好きなだけ外を見ていていいよ」

「!?」

「気になるならそうだな…。田部がいいと言うまで話しとろうか」

ニヤリとした源之助さんはそう言って語り出す。若い頃無茶した話や初恋の人との出会い。

生き生きと話す源之助さんの言葉に、目の前にその情景を浮かべられるようで、ちょっとした映画の朗読を聞いているようだった。

源之助さんの話に聞き惚れていると、不意に車は止まる。

「着きましたよ。ずいぶん熱が入っていたので声はかけませんでした」

「琴葉ちゃん、悪かったな」

「ッフルフル」

先に降りていった田部さんは、外からドアを開けて源之助さんを支える。

反対のドアから出ると、目の前に広がったのが墓地だったことに目を見開く。

お墓参り…?いったい誰の…。
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