私のご主人様Ⅲ

「琴葉ちゃん、こっちだ」

田部さんの肩を杖代りに前に進む源之助さんに早足で追い付き、ゆっくりとその後ろを追う。

いくつもの墓石が等間隔で並んでいる。

通路として続く1本道を進み、突き当たりまで来ると目の前の他の墓石とは違う、敷地も持った墓の前に立つ。

敷地もだけど大きさも一回り大きい墓。それに圧倒されていると、不意に墓の隅に人の頭ほどの大きさがある岩のようなものが転がっていた。

あれはなんだろう…。思わずじっと見つめていると、源之助さんは深いため息をつく。

「ここだよ。…わしの初恋の人の墓だ」

「…」

悲しげな顔をする源之助さんに、どんな言葉をかけたらいいのか分からない。

まさか、亡くなっていたなんて思わなかった。源之助さんの語る初恋の人は、あまりに生き生きと輝いていたから…。

「琴葉ちゃん、花束を彼女に」

「っ!?…コク」

私が手向けていいものか分からなかったけど、源之助さんの目に断ることは出来ず、おずおずと前に進み出る。

近くで見ると、見下ろされているような感覚になって萎縮してしまう。
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