私のご主人様Ⅲ
「琴音、ついてこい」
「ッコク」
気を抜きすぎて反応に遅れる。季龍さんの後に続こうとすると源之助さんに声をかけられる。
「季龍、奏多と暁には休暇をやった。今、琴葉ちゃんを連れていくならお前が見なさい」
「分かった。琴音」
今度こそ家の中に戻っていく季龍さんの背についていく前に源之助さんに頭を下げる。
顔を上げて今度こそ季龍さんを追いかけた。
向かったのは季龍さんの部屋で、襖が閉められるなりまた抱き締められた。
「…抵抗しないのか?」
「…?」
顔を上げると頬を撫でられる。抵抗しないのかって、抱き締められるくらいならそんなに気にしない。
…あ、でも季龍さんはご主人様だ。そう考えるとやっぱりおかしいかも。ご主人様に抱き締められる使用人。…うん、あんまりよろしくない場面が多い気がする。
「抵抗しないのは、俺が主人だからか?」
「…」
…そう言われれば、そうなのかもしれない。
クラスの男子に抱き締められたら多分反射的にひっくり返しそう。…多分。