私のご主人様Ⅲ
親父に見破られたのはすぐに分かった。
誰を想っているのか明らかではない俺が、琴音を抱き締める資格がないことも理解した。
だからあの時すぐに離した。琴音を傷つけないために。
っくそ、いつからだ。いつから俺は琴音を…。琴音があまりにあいつに似ているから、気づけば重ねていた。
自分でも気づかぬうちに重ねていて、気づけば琴音か、あいつ、どちらに気持ちが向けられているのかも分からなくなっていた。
最低なことをしていると分かっているのに、琴音に気づかれていないことをいいことにそのままにしようとする俺の弱さだ。
「…バカだと言いたいんだろ」
「んーまぁ、そうだね。…何で気づかないのかなぁって思う」
「あ?」
気づかない?一体何に気づいていないと言うんだ。
信洋を睨み付けても飄々と薄ら笑いを浮かべるだけだ。