私のご主人様Ⅲ
「回りくどいのはいい。早く言え」
「…若も薄々分かってるんでしょ。それ、せーかい」
「…は?」
「だーかーらー!ここちゃんは、若がずーっと忘れられなかった、“琴音ちゃん”なんだよ」
信洋の言葉が遠く感じる。
…そんな偶然があるのか?二度と会うことはない。…会うべきではないあいつがなぜ、こんな形で…。
再会など望んでいなかった。俺に関わることがどれだけ危険なのか分かっているから…。
「…確証はあるのか」
「親父さんが確認した。ここちゃん、若と会った日のこと覚えたよ」
「…」
間違いないのか…。
…だが、それを否定する言葉はでないのに、それを納得させる考えは浮かぶ。
容姿も瓜二つ。周りをよく見て動く器量のよさ。財閥の使用人。
どれもこれも共通している。
額に手をつき、ため息をこぼす。