私のご主人様Ⅲ

「回りくどいのはいい。早く言え」

「…若も薄々分かってるんでしょ。それ、せーかい」

「…は?」

「だーかーらー!ここちゃんは、若がずーっと忘れられなかった、“琴音ちゃん”なんだよ」

信洋の言葉が遠く感じる。

…そんな偶然があるのか?二度と会うことはない。…会うべきではないあいつがなぜ、こんな形で…。

再会など望んでいなかった。俺に関わることがどれだけ危険なのか分かっているから…。

「…確証はあるのか」

「親父さんが確認した。ここちゃん、若と会った日のこと覚えたよ」

「…」

間違いないのか…。

…だが、それを否定する言葉はでないのに、それを納得させる考えは浮かぶ。

容姿も瓜二つ。周りをよく見て動く器量のよさ。財閥の使用人。

どれもこれも共通している。

額に手をつき、ため息をこぼす。
< 195 / 286 >

この作品をシェア

pagetop