私のご主人様Ⅲ
その途端、イラついたのを自覚して、台所から視線を背け、頭を抱える。
くっそ、どうしてあの程度でイラついてんだ俺は。
琴音と暁はいつも一緒にいる。あれぐらい当たり前だろうが。
分かっていても、イラつくのを押さえきれなくなっていく。その速度は、琴音があいつだと分かる前以上で…。
「…っくそ」
今更どうしろってんだ。
琴音は永塚に必要で、仕事は十分にこなしている。
俺は琴音に何を求めようとしている。与えた仕事以上に求めようとする何かは、もやもやと霧に包まれたまま。
はっきりしない自分に更にイラついた。
「…き、りゅ………さん?」
「っ!?」
掠れているような声に我に返る。目の前に立つ琴音に、らしくもなく緊張した。
「…だい、………じょ…………ぶ?」
「…あぁ。少し疲れただけだ」
心配そうに眉を八の字にする琴音の頭を撫でる。それでも納得しない琴音を何とか言い聞かせて台所に戻した。
季龍side end