私のご主人様Ⅲ
「お前せいじゃない。お前は何も悪くねぇんだ。謝るな」
「…違います。私が、いけないから」
「琴音」
「私が、季龍さんの命令に従えないから。だから、私が…」
「…琴音。俺は、お前を操り人形にしたい訳じゃねぇよ」
操り人形…?
恐る恐る季龍さんを見上げると、視線が重なる。
その瞳に、飲み込まれるようにまた動けなくなる。
「言っただろ。自分を傷つけるようなことはするな。卑下にするなと」
「…」
「今回は俺に非がある。だから、謝る。お前に謝らせたら、俺は自分の非すら認められねぇ男になるんだよ」
違う。こんなの、違う。
だって、使用人は主の言うことが全て。
主が怒るのは私のせいなの。
こんなの、知らない。主が、全てなのに。なんで、それを否定するの…?
「…季龍さん、私は使用人です。主の言うことが全て正しいんです。それが、理不尽だろうが、そんなの、関係ないんです…」
「…お前にそう思わせてる時点で、俺はダメな奴なんだよ」
季龍さんはそう言うと、悔しそうに表情を歪ませる。
その表情に、また季龍さんを苦しめたんだと、ゾッとした。