私のご主人様Ⅲ
「…?」
な、なんだろう。門の前に大きなアーチ状の看板がある。それに、あちこちに生徒がいてまるでお祭り騒ぎだ。
…お祭り騒ぎ?そういえば、今日って確か文化祭だったっけ…??
ドアが開いていつもなら引っ張り出されるところが、季龍さんは車の中を覗き込むように体制を低くして、運転席の信洋さんを睨んだ。
「信洋、てめぇ文化祭のこと知ってやがったのか」
「えーなんのこと?」
「とぼけんな。やったら今日には登校出来るようにっとか言いながら仕事やってただろうが!」
信洋さんとぼけながら視線はあらぬ方向だ。
…確信犯みたい。その間にも季龍さんに気づいたらしい生徒たちが徐々に群がり始めて来る。
「ほら、ここちゃん早く降りて~」
「っ!?」
う、嘘でしょ…。今まで2週間近くガッツリ休んでたのにいきなり文化祭当日に復活って…。うん、すごく感じが悪い気がする。
首を横に降ろうとしたけど、特大のため息と共に外に引っ張り出された。
その途端はち切れんばかりの歓声にたまらず耳を塞ぐ。
そんなことを気にもせず、いつもよりいささか乱暴にドアを閉めた季龍さんは、私の手を掴んで歩き出す。もちろん一気に悲鳴に変わる歓声。
いつもより10割増の悲鳴や悪口の中、突き進んでいく。