私のご主人様Ⅲ
「…俺の母親もいない。…生きてるのかすら、わかんねぇ」
「…」
季龍さん…?
私の頭を撫でたまま、季龍さんは虚空を見つめる。
その顔に、ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
いつもまっすぐ前を見据えていた季龍さんが、今にもいなくなってしまいそうな脆さを全面に出していたことなんか1度もない。
何かを抱えているとは思っていた。それが何かのか計り知れないけど、まさかこんな顔をするなんて思っても見なかった。
そっと顔に手を伸ばすと、視線が重なる。頬を触れる。季龍さんの瞳が一瞬揺らいで私の肩に額をつける。
「守れなかった。…守れなかったんだ」
「…」
初めてだ。
こんな季龍さんを見るのは…。
その姿は、幼い頃の私そっくりで、寂しさを抱えたまま、それをぶつける先もなくて我慢だけをひたすら覚えていくだけ。
同じだ。私も、季龍さんも…。ずっとずっと寂しくて、後悔ばかりを抱えている。