私のご主人様Ⅲ
『いいかい?琴葉。明日から陣之内家に仕えるが、その前に1つだけお父さんと約束だよ』
『なぁに、お父さん。私もう、中学生だよ?』
『中学生だから…ね。…琴葉、真剣な話なんだ』
『…うん』
『琴葉は明日から陣之内家の使用人になる。いいかい、使用人になるんだ』
『うん』
『使用人は、決して思いを主人の前で見せてはいけない。ましてや、ご主人様に思いを寄せるなんて絶対にしてはダメだ』
『思いを、寄せる?』
『…人を好きになるってことだよ』
『ご主人様のことを好きになっちゃダメなの?』
『そうだよ。いいね、琴葉。ご主人様のことを、お坊っちゃまのことを好きになってはいけないよ』
『…分かった。好きにならない。…好きになるわけないよ。だって、住んでる世界が違うんだもん』