私のご主人様Ⅲ
お互いにまじまじと見つめ合っていると、ドタバタと足音がして、奏多さんが現れた。
「っ!勝手に動き回るやつがいるか!!戻るぞ!!」
明らかに怒ってる奏多さんに肩が跳ねる。
それでも、茶髪の男の子は悪気を全く見せない。それどころか随分余裕な顔だ。
「なぁ、この子誰?」
「あんたが知る必要はない。いいから戻るぞ」
奏多さんの焦りようが、この状況が想定されたものじゃないと知らせてくる。
それに、あえて私に指示を出さない奏多さんの行動が、自分から離れろと言っているように感じる。
とりあえず離れよう。何かあれば誰かが教えてくれる。
頭を下げ、素早く背を向けて歩き出す。とりあえず台所にいよう。お茶とかも用意しないといけないかもしれない。
「待った。自己紹介くらいしてよ」
「っ!?」
「おいっ!」
見かけによらず随分強引ですねっ!?
左手首をつかんだ手は離れそうにない。奏多さんを見ても、視線は重ならないまま。
どうしよう…。男の子を見ると、悪気のない顔で笑みを浮かべるだけだ。