私のご主人様Ⅲ
手を引く。奴の顔は笑みを浮かべたまま。その余裕がどこからか来るのか、分からなかった。
だからこそ、気持ち悪い。何かを隠されていることが明確はなのに、それが分からねぇ。 ただただ神経を張り巡らせて疲労を蓄積させるだけだ。
「…」
「…」
沈黙が落ちる。互いの腹の探り合いが続く中、不意に外が騒がしくなる。
「おいっ!医者呼べ!!」
「ッ琴音さん!!?」
「ッ!?」
耳に飛び込んできた名に、襖を開け放つ。
目に飛び込んできたのは、平沢に抱かれ、顔色を真っ青にさせた琴音の姿だった。意識がないのか、投げ出された手足が力なく揺れる。
「っ何があった!?」
「分かりませんっ!ただ、倒れる音がして駆けつけたときにはもう…」
「琴音!おい!!しっかりしろ!!」
頬を叩いても、大声で呼び掛けても琴音の意識は戻らねぇ。それどころか、体は冷えきってまるで死んでるやつの体のようだ。
まさか、毒…?そんなもん、一体どこから!?