私のご主人様Ⅲ

「交渉、開始かなぁ」

「ってめぇが…」

間に入ってきた奴は、信洋にナイフを突きつけられたまま、胸元から出したのは恐らく解毒薬。

こいつは誰かが毒で倒れるのを待ってたのか。よりにもよって、琴音が初めにそれを…。

守ると約束した直後に、真っ先に巻き込んだ。関係ないこいつを…。自分の浅はかさを呪う。だが、反省よりも先に動かなければ。

解毒薬を出してきた時点で、この毒の脅威を示しているようなもの。あとどれだけもつのかすら分からねぇ。

奴に向かうと、まるでおもちゃのように解毒薬をちらつかせた。

「お前が関原に戻れば、これをやるよ」

「お前さぁ、交渉のやり方教わんなかったわけ?交渉っていうのは、お互いが対等な立場にある時にすんだよ。四方八方敵に囲まれて、交換条件に出すもん見せつけてるてめぇが、交渉なんかできるわけねぇだろ」

マジでキレた信洋を初めて見る。

一切の笑みを浮かべず、今にも奴を殺しそうな殺気を滲み出す。奴の首に突きつけたナイフが、肌を割き血が溢れる。

「寄越せ。俺がてめぇの首を落とす前に」
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