私のご主人様Ⅲ

その場にいる誰もが殺気をみなぎらせ、奴を睨み付ける。

普段は温厚な奏多や信洋でさえ、その顔は極道の道を行く者のもんだ。

そんな雰囲気に飲まれたのか、奴は恐怖を全面に出した顔つきで床に這いつくばっている。

「で、どうします?俺はどうせなら痛め付けてやりたいんですけど」

「痛め付ける?なぶり殺すの間違いですよね、信洋さん」

「信洋、奏多、待て。血の気の多い奴は好かんぞ」

「ここちゃん殺そうとしたんですよ。こいつ」

「お前たちが早とちりに動いたせいでもあるだろう。…だが、とりあえずここに来た理由を吐いてもらおうか」

奴の前で腰を据えた親父は、その場で1番の覇気を出し、その場を掌握する。

その気迫に誰もが飲まれ、息を飲む。

組潰しの永塚源之助。その名は伊達ではない。

奴も例外なく親父の気に飲まれていた。
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