私のご主人様Ⅲ
「お前、どこのもんだ?」
「…中野 蓮美。若頭…補佐」
「中野のもんか。…関原と仲良くしてるらしいな。…関原の指示か」
「っあぁそうだよ!!関原の組長が、逃げ出した若頭とお嬢を探してる!!俺らはそれを手伝わされてるだけだ!!」
奴がやけっぱちに吐いた言葉に、驚かない奴はいない。
親父もそれは同じで、その目を細める。
「信洋、好きにするといい」
「っな…」
「…りょーかい」
目を見開いた奴に対して、信洋は歓喜に笑みを浮かべる。
そして、信洋は奴の頭を押さえつけるとそれを奴の左目に向けて、瓶を傾けた。
直後に響いた奴の絶叫。鼻につく嫌な臭い。その場の誰もが眉1つ動かすことなく、それを目に焼き付ける。
僅かな量でもこの威力。もしあのとき親父が止めに来なければ、この手で琴音を殺していた。
その怒りが、憎しみが奴を殺せと命じて、信洋が持つあのビンを奴に叩きつけたくなる衝動に襲われる。
それを遂行しなかったのは、ひとえに親父の存在があったからだ。
「組同士の杯を交わしておいて、手伝わされてるなどとほざくとは、滑稽にもほどがあるの」
「っぐ…あ………」
「関原の組長に伝えろ。わしの子を傷つけるならば、その首貰うことも躊躇わないと」
親父はそれだけ告げると立ち上がり、奴の前では凛とその背を見せつけて部屋を去る。