私のご主人様Ⅲ

「平沢さんっ!琴音ちゃんは!!」

「うおっ!?しー!寝とるんだから静かにせい」

先に聞こえてきた声に、思わず息をつく。

部屋を覗くと、布団に寝かされた琴音の顔色は随分よくなっていて、薬が効いたのだと安心して息をついた。

部屋に入ると平沢が口角を上げる。睨んでもその顔は収まらなかった。

「命に別状はないそうだ。しばらくは麻痺が残るかもしれないが、後遺症も恐らくでないだろうと」

「そうか…」

「毒の出所は分かったんですか?」

「食材から毒が出た。全部捨てて消毒中だ。念のため、食器類も総変えしたほうがいいだろうなぁ」

「なら、ここちゃんが寝てるうちに済ませますか。…怖い思いさせたくないでしょ、若」

「…あぁ」

琴音の頬を手を添える。まさか、こいつが狙われることを考えていなかった。…いや、奴が琴音にやけに執着していた時点で気づくべきだったんだ。

だがなぜだ。いくらオークションで買った人間とはいえ、琴音を狙う意味が分からねぇ。

普通なら、買ってきたただの奴隷を標的にして、組にダメージが与えられると考えるか?

…やつらは知ってると仮定すれば?琴音が俺たちに精神的に苦痛を与えられる弱点だと。俺にとって、琴音が大切な存在であることを知っていたとしたら。

そうでなければ琴音を狙う意味を説明できない。ならば、どこから漏れた。…1番の可能性は。
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