私のご主人様Ⅲ
「ここちゃん起きてる?」
「起きてますよ」
「よかった。具合はどう?」
部屋にやって来た信洋さんは私の前で腰を下ろすと、熱を測るみたいに額に触れられる。
「熱はないね。気持ち悪いとかある?」
「コク」
問診のように、頷いたり首を横に振って伝えるけど、やりすぎて気持ち悪くなってきた。
それを察してくれたのか、信洋さんの質問は止まる。
「ここちゃん、倒れる前のこと、覚えてる?」
「…コク」
正直曖昧で、はっきりとは覚えていない。
でも、あの、野菜についた変なぬめりは覚えてる。それを確かめようとして、触って…そしたら、気持ち悪くなって、それで…。
ダメだそれ以上思い出せない。
あれが毒だったのかな。でも、それ以外に思い浮かぶこともない。
それを暁くん伝いに信洋さんに伝えると、思い当たったことがあったのか、その表情を険しくさせた。