私のご主人様Ⅲ
でも、7年前。
そんな生活が一変した。
…母親が、人身売買にかけられたからだ。
―――
『母さん!!』
『ッチ邪魔だ!どけ!!』
『ッ子どもに手を出さないで!!』
突然やって来た男たちは、母さんを連れて行こうとする。その前に立ちはだかった俺はあっという間に男に弾き飛ばされる。
でも、それ以上手を出されることはなかった。母さんが身を呈して守ってくれていたから。
泣き叫ぶ梨々香を部屋に置いて、向かったのは親父の部屋。
親父なら何とか出来ると思ったから。組長の親父なら、止められると思った。
…組長の女が商品にかけられているという意味を、分かりきっていなかったから。
ノックもせずに部屋に俺が部屋に飛び込んでも親父は気にした様子もなく、タバコをふかしていた。
『親父!!母さんがッ!』
『あぁ』
『あぁって…なんだよ、それ…。母さんがつれていかれたのに!!』
不意に親父が机を殴る。その音に声をつまらせた俺は、親父の瞳がなにも写していないことに気づいて、言葉を失った。