私のご主人様Ⅲ
『あのハッカーは殺して海に捨てるように指示した』
『…そうか』
信洋はそのままあいつの根城に置いて、親父には殺したと適当に報告した。
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この頃の親父は俺たちだけでなく、組のことにも無関心になりつつあった。
指示は出すが、昔みたいなキレはねぇ。実質、幹部が組を動かすような状況だったと知ったのは、関原を抜け出した後だった。
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『なぁ、季龍クン』
『若って呼べっつってんだろ』
『季龍クンさ、妹いるよね?』
『あ?』
唐突に聞かれたことに眉間にシワが寄ったのが自分でも分かった。
梨々香のことは信洋には伝えていなかった。大方、勝手に調べたんだろうと予測はついたが…。
『だからなんだよ』
『…妹チャン、危ないかもよ』
『は?』
『…杞憂なら、それでいいんだけど』
あまり見せない信洋の静かな表情に、嫌な予感がした。梨々香の身に何か迫ってるんじゃないかと考えるより前に、気づけば動いていた。