私のご主人様Ⅲ

『あのハッカーは殺して海に捨てるように指示した』

『…そうか』

信洋はそのままあいつの根城に置いて、親父には殺したと適当に報告した。

―――

この頃の親父は俺たちだけでなく、組のことにも無関心になりつつあった。

指示は出すが、昔みたいなキレはねぇ。実質、幹部が組を動かすような状況だったと知ったのは、関原を抜け出した後だった。

―――

『なぁ、季龍クン』

『若って呼べっつってんだろ』

『季龍クンさ、妹いるよね?』

『あ?』

唐突に聞かれたことに眉間にシワが寄ったのが自分でも分かった。

梨々香のことは信洋には伝えていなかった。大方、勝手に調べたんだろうと予測はついたが…。

『だからなんだよ』

『…妹チャン、危ないかもよ』

『は?』

『…杞憂なら、それでいいんだけど』

あまり見せない信洋の静かな表情に、嫌な予感がした。梨々香の身に何か迫ってるんじゃないかと考えるより前に、気づけば動いていた。
< 268 / 286 >

この作品をシェア

pagetop