私のご主人様Ⅲ
『誰だッ!?』
『ッお兄ちゃん!!』
男が驚いて手を止めた隙に、奴を蹴り飛ばし梨々香の手を掴む。
一瞬で臨戦態勢に入る男の用心棒。だが、倒れた男に銃口を突き付けたことで足を引いた。
『…季龍』
『…』
こんな状況でも1人、微動だにしなかった親父に視線を向ける。表情もなく、感情が読み取れない目をしていた。
『忘れろ』
『…』
『お前に“妹”はいない』
呪いのように告げられた言葉。
同じだ。母親の時と、全く同じだった。
それが正しいとか間違ってるとか、そんなことはどうでもいいように感じさせるその言葉は、呪縛のように俺を縛る。
もう二度と失わない。もう二度と渡したりしない。
その意思が、打ち勝った。