私のご主人様Ⅲ
『で、行き先の案とかあるのか?』
『…分からねぇ。とりあえず、県外に…』
『ダメだ。移動してる途中で見つかるのがオチだな。そっこらじゅうに防犯カメラがある時代だ。俺もそれを見て季龍クンの居場所を突き止めたようなもんだし』
『…』
信洋の言葉は的確で返すことさえ出来なかった。
本当に無計画だったのを突き付けられたようなもんだ。ろくに考えも回らなかった。
『…最悪、俺のことはいい。梨々香だけでも』
『いや、ダメでしょ。妹チャン、絶対に季龍クンを見殺しにして行くような子じゃないし。…季龍クンが1番分かってるでしょ』
『なら、どうしろっていうんだよ…』
あまりにも無力で、どうにも出来なかった。考えもろくに出ず、投げ出すように吐いたその言葉は、ようやく出たSOSだったのかもしれねぇ。
そして、それを待っていたかのように信洋は携帯を取り出し、どこかへ電話をし始めた。
『…あ、もしもし、親父さん?関原の子ども2人とも保護しました』
『は?』
『あー、了解です。んじゃ、ばらしときますね』
あっという間に切られた電話。直後、信洋の視線から逃れるように立ち上がり、距離をとる。