私のご主人様Ⅲ
その様子を見つめていた私は、突然捕まれた手にビクリとする。
顔を向ければ、季龍さんが私の左手をとってなにかをしている。それが終わったのか、季龍さんは私の手を両手で包み込んだ。
感覚が鈍ったままの手は、何が起こったのかその詳細まで感覚を掴めない。
「…必ず迎えに行く。だから、待ってろ」
「…コク」
私が頷いたのを見て季龍さんは、私の手をゆっくりと話していく。
完全に離れても名残惜しそうに遠ざかっていく季龍さんの手。
顔を見上げれば、そこにいたのはもう、永塚組の若頭、永塚季龍がいた。
その顔にさっきまでの、悲しみも、戸惑いもなかった。
バックドアが閉まる。エンジンがかかった車はカタカタも揺れ始める。