私のご主人様Ⅲ
腕を掴んでいた手を離れ、首に手がかかる。
僅かに力が込められただけ。なのに、体は自由をなくして動けなくなる。
「琴音、逃げられると思うな」
耳元で、私だけに聞こえる声で言った季龍さんは、私の首にかけられたネックレスに触れる。
形でさえネックレスだけど、これは首輪だ。これがある限り、私は逃げられないし、そんな気も起こらない。
「…“分かってます”」
逃げる希望は奪われた。まぁ、そんな希望あったら学校に出してもらえるわけないか。
抵抗する気はない。目を閉じ、体の力を抜く。それが伝わったのか、首に回った手は離れた。
「葉月さん、知らない?」
麻夏くんの声に現実に引き戻される。
ゆっくり目を開けると目の前に麻夏くんがいる。その目は、私を助けようとしてくれている。
でも、その手は取れない。麻夏くんに抱えきれるほどの問題じゃない。
この人は私をどうこうできないんだ。