私のご主人様Ⅲ
「あれ?…気のせい…か?」
先生の歩き回る足音がしばらく聞こえたけど、やがて不思議そうな声と共にドアが閉まった音が響き、足音は遠くなっていった。
「ふー。いったいった。琴音チャンさぼるの下手だろ~」
嫌だ。触られたくないっ!!
すぐ耳元で聞こえた声で我に帰り、でたらめに暴れる。密着した体に、全身から嫌な汗が吹き出してくる。
「っちょ!?落ち着けよ!?」
「ッ触るな!!」
「分かった!分かった!!離れるから!!」
体に回った手の力が緩んだ瞬間に、逃れて距離をとる。
顔をあげた先にいたのは、降参と言うように両手を上げるクラスメイトの姿があった。
…この人、前に近づこうとして来た人。確か名前は、舛田、颯(ますだ はやて)…。季龍さんは、この人を組の息子だって言ったはずだ。
季龍さんに近づくなと牽制されてから一切接触してこなかったのに、どうして今更…。
いつでも逃げられるように、背中をドアに預け、ドアノブに手をかける。
じっと見つめていると、舛田は手を下ろし、私を見て笑った。