私のご主人様Ⅲ
「信じらんねぇ?」
「…」
「俺らは本気だよ。あ~、そうだ。前、車に追っかけられたことあるでしょ。あれ、俺らがやったんだよ」
「っ!?」
夏休みに入る前の帰り、急に雰囲気が変わった車内を思い出す。
あの日から急に騒がしくなった永塚組。それを引き起こした人が目の前にいる。
季龍さんはたちは知っているんだろうか。こんなに近くに敵がいることを。
…いや、知らないと思う。
知っているなら、私に警告するはず。そもそも学校に行かせないと思う。私ならそうする。
…となると、この状況は私にとって利なのか?でも、利だとしても、ハイリスク過ぎる。
「俺らは永塚組を潰す。んで、琴葉チャンは、永塚組から逃げ出したいんだろ?俺が琴葉チャンを逃がす代わりに、俺らに加担してほしいって訳だ」
ニヤニヤしながらそう口にする舛田の言葉は、安直でとても飛び付いてしまいたくなる魅力も希望も感じない。
それに、彼の飄々とした態度が冗談を言っているようにしか見えなかった。