私のご主人様Ⅲ
呆然と立ち尽くし、その状況を見つめることしか出来ない。だが、不意に伸びてきた手に視界を塞がれ、真っ暗になる。
「見るな」
耳元で呟くように言われた言葉に、現実に引き戻される。
季龍さん…。すぐに体は反転し、目隠しを外されたと同時に背を押される。
ふらついた体は暁くんに受け止められて、振り返ろうとするのも許さないと言うように頭を押さえられた。
「医者を呼べ。そこの部屋を使え」
「「「はいっ!!」」」
季龍さんの声に、一斉に動き出す組員たち。
動けないままでいると、不意に膝の裏に手が回り、抱き上げられる。
「暁、琴音から目を離すな」
「はい」
頭の上で短いやり取りがされると、暁くんは惨状から背を向け、歩き出す。
暁くんの肩越しに、誰かの肩を借りて、季龍さんの指示した部屋に入ろうとする奏多さんが見えたような気がした。
「っあ…!?」
「琴音、大人しくしてくれ」
思わず駆け寄ろうとした私を力づくで押さえた暁くんは、冷静に判断を下す。
その冷静さに突発的に動こうとした自分を恥じる。