私のご主人様Ⅲ
今私が行って何になる?
きっと奏多さんは心配かけないようにと無理して笑う。平気だって言って、無理するだけだと分かってる。
…なら、私が今行くのは筋違いだ。
暁くんの肩に額をつけ、目を閉じる。
「琴音、下ろすぞ」
声をかけられ、顔をあげると台所に戻ってきていた。
梨々香ちゃんの姿はなく、私と暁くんしかいない。下ろされても、暁くんの服を掴んだまま立ち尽くす。
どうしよう。私のせいかもしれない。あの時、すぐ逃げ出していれば。あの人が行動に移すと決める前に離れていれば、こんなことには…。
「…琴音、心配すんな。奏多さんは、戦場を切り抜けてきた人だ。すぐにへらへらして戻ってくる」
「…」
「だから、心配すんな。俺が一緒に待っててやる。今、琴音に出来るのは、怪我した人たちに飯作ってやることだろ?」
…違う。暁くん、違うの。
やるべきことは分かってる。今私が出来ることなんか限られてるんだもん。
でも、本当にそれでいいの?このまま、知らないふりで、本当に…。