私のご主人様Ⅲ
「…ぁ」
「ほら。作り直さなきゃいけないやつもあるだろ。なに作るんだ?」
「…」
伝えようとしても、暁くんはそれに気付かずに私の背を押す。
暁くんも動揺してる。
何とか平然を装っているけど、その視線は廊下に向けられていて、微かに聞こえてくる声を気にしてる。
やっぱり誰もこの状況を飲み込めていない。予測すらされてなかったんだ。
この状況の原因まで知っているのは、私だけだ。
『俺が琴葉チャンを逃がす代わりに、俺らに加担してほしいって訳だ』
…可能かもしれない。
このまま、彼らが隠れ続けてくれれば、永塚組は混乱する。
その混乱した状況なら、隙ができる。逃げないという意思を示していれば、私に対する警戒も薄れる。
そうなれば、舛田との取引もうまく行くかもしれない。