私のご主人様Ⅲ

…もし、もし私が舛田に協力したとして。

永塚組の人たちが、奏多さんや暁くん、信洋さん、梨々香ちゃん、季龍さんが傷ついていくのを見ていくことになるとすれば。

その時、私は本当に帰られることを喜べるんだろうか。

確かにここにいる人たちは私の味方じゃない。私のことを縛る人たちだ。

でも、でも…。

今までもらった優しさは嘘じゃない。

今まで向けられた笑顔は嘘じゃない。

今まで差し伸べられた手は私を助けてくれた。

今まで抱き締めてくれたぬくもりは私を守ってくれた。

それは、全部全部本物で、偽物なんかじゃない。

『少なくともここにいる間はお前は俺たちの家族だ』

季龍さんがくれたこの言葉だって、心からの本心で、永塚組の人たちはいつだって私を理不尽に扱うことなんかなかった。

舛田組に加担するということは、永塚組を裏切るということ。今までもらった優しさを、ぬくもりを、思いを踏みにじるということ。
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