私のご主人様Ⅲ
「奏多さんは」
「大丈夫。頭かすって左足に1発だから、しばらく歩けないだろうけど、ピンピンしてる。殺気立ってるくらいね」
さらっと言っているけど、大丈夫なんかじゃない。それに、1発って、拳銃ってこと…?
ゾクッと背筋に嫌な感覚が流れていく。
信洋さんの手が背を叩く。まるで察しているかのように、大丈夫だと励ますように。
その手のお陰か、深く息を吐き出すと嫌な感覚は遠ざかって消えた。
「そういうわけで、ここちゃん。しばらく奏多と会えないけど、心配しなくていいから。会えるようになったらまた甘えてやって」
「…コク」
何とか頷くと、また頭をなで回される。その手が少し乱暴で、押し退けるとニヤリと確信犯だと言っているような顔をされた。
「暁、とりあえず持っていってやって。薬飲ませるにもとりあえず食わせないといけないから」
「分かりました。…琴音は」
「しばらく森末をこっちにつける。来るまで俺がいるから行ってきて」
暁くんは私に視線を向けるとすぐ戻るからと言い残して、雑炊の乗ったワゴンを押して台所を出ていった。