私のご主人様Ⅲ
暁くんを見送り、信洋さんに視線を向ける。
「ここちゃん、勝手に飛び出してきちゃダメだよ?見せたくないこともあるのは、理解してほしい」
「…コク」
「っま、とは言っても心配してくれたんでしょ?奏多、喜んでたよ。早く顔見せるんだって意気込んでたから」
信洋さんはわざとらしく楽しげに振る舞う。
だけど、その瞳の奥に怒りが見え隠れしているのがはっきり分かる。
この人たちを敵に回すことになるかもしれない。
私の判断ひとつでこの流れは大きく変わるだろう。
…やるしかない。例え何を犠牲にしようと、私は帰らなきゃいけない。
決めたはずだ。帰るために動くんだって。このチャンスを逃すわけにはいかないから…。