私のご主人様Ⅲ

「え?」

「奏多さん??」

頭に巻いてあった包帯をほどく。立ち上がろうと足に力を込めると痛みは走ったが、立ち上がれないことはない。

そのまま立ち上がろうとすると、暁に支えられる。

「奏多さんっ何しようとしてるんすか!」

「琴音ちゃん、迎えに行く時間だろ。俺も行く」

「無茶ですよ!それに、来週中には復帰するって奏多さんが言ったんすよ!?」

「包帯は外した!車に乗るくらい俺にだってできる」

「でもっ」

「まぁ、いいんじゃね?暁、松葉杖持ってきてやれよ」

加勢してくれたのはまさかの信洋さんで、思わず視線を向けると苦笑が返ってくる。

「心配なんだろ?顔見たら安心するなら、迎えに行くくらいしてやれよ」

「…いつ、襲撃があるかも分からないのに、ですか?」

「…あぁ。奏多も覚悟していくんだろ?」

頷くと、反対していた暁はバカだろとこぼしながら、松葉杖を取りに行ってくれる。

傍に無造作に置かれている着替えに手を伸ばし、着替え始める。

信洋さんは傍で黙ったままだったけど、あえてなにも言わなかった。
< 64 / 286 >

この作品をシェア

pagetop