私のご主人様Ⅲ

「琴音、お前説教あんの忘れてんじゃねぇだろうな」

「…」

部屋に戻そうとする暁に抵抗して何度も振り返って俺を見る琴音ちゃん。

その目は寂しそうなのに、心配の色が強い。

早く治して傍にいてあげたいって思わせるんだから、ちょっとたちが悪いような気もする。

早く行きなと促すと、足は動かすのに顔はこっちを見たまま。

結局見えなくなるまで見送って、療養してる部屋に入ったものの、流石に立ちっぱなしは堪えて布団に倒れるように横になった。

こ、これ来週中に復帰できるのか?

でも、やらないと琴音ちゃんが心配する。

自分で言ったハードルが思いの外高いことに今さら気づいて、後悔しつつもとにかくやるだけやろうと意気込むしかなかった。

でも、とりあえず今は休息第一だ。

というわけで、さっさと布団を被り目を閉じた。

奏多side end
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