私のご主人様Ⅲ
「琴音、聞いてんのか」
「…」
「…お前、学校で…」
暁くんが何かを言いかけた瞬間、閉じられていた襖が開け放たれ、息を乱した森末さんが飛び込んでくる。
同時に、遠くから喧騒が聞こえてくる。
「またやられたっ!暁は琴音ちゃんと待機!」
「ッ!?嘘だろ!?」
「…」
今にも飛び出して行きそうな勢いで立ち上がった暁くんは、それでも踏みとどまった。
森末さんはどこかに走っていって、玄関先に人が集まっていくように、声が大きくなっていく。
「…っくそまた闇討ちかよ」
「…」
壁に拳を叩きつける暁くんは、悔しさを滲ませ、見えない敵へ殺意を向ける。
その様子をぼんやりと見つめる自分は、この状況を誰よりも理解しているはずなのに、まるで無関係の出来事のように感じている。