私のご主人様Ⅲ
不意に伸ばされる手。その手は迷うことなく私の首を掴み、教室のドアに押し当てられる。
「ッ!!」
「っひ!?」
息が詰まる。徐々に力が込められていく手は強くて離れない。
なのに、季龍さんの表情からは何も読み取れない。それが更に恐怖を呼ぶ。
「っく…」
「琴音。お前の主人は誰だ」
「…“き、りゅう…さん”」
「あ?聞こえねぇよ」
圧迫感が強くなる。遠くなりそうな意識を無理矢理引き止め、季龍さんを見つめ返す。
「なぜ舛田と話した。俺が言ったことを忘れたのか」
首を横に振ろうとしても、それをさせないと言うように首の締め付けがきつくなる。
腕の力が抜ける。バラバラとなにか落ちる音が微かに聞こえてきたけど、確認する余裕はない。