私のご主人様Ⅲ
「あ、若無視しなくても…え?」
車にもたれ掛かっていた信洋が、琴音の姿を見て目を見開く。
早足に近づいてきた信洋は琴音の顔を覗き込んだ。
「若、ここちゃんどうしたの?それに、これ痣じゃ…」
「知らねぇ。戻るぞ」
「え、いやいや病院でしょ」
「回診にきてんだろ。そいつに診せる」
後部座席に琴音を乗せ、その隣に乗り込み頭を肩にもたれさせる。
信洋は不満げな顔はしたが、運転席に戻り車を発進させる。
車の揺れに合わせて琴音の体が揺れる。体制が崩れそうになるのを肩を抱いて止める。
起きる気配がねぇ。こんな満身創痍の上に手加減をしたとはいえ、蹴りを入れたせいか。
流石に、後悔に襲われる。知らなかったとはいえ、首を絞め、腹を蹴り、気絶するまでやめなかった自分を殴りたくなる。