雪降る刹那
私がまだ小さい頃、母親が大きなお屋敷でお手伝いさんをしていて、
とても大きなそのお屋敷は私の遊び場となっていた。
母親の仕事が終わるのをいつも一人で待っていた私。
そのせいか一人遊びはお手の物で、その場所は私にとっておもちゃ箱のようにキラキラ輝いていたのを今でも覚えている。
その日もいつもと変わらず一人で遊んでいた。
雪のちらつく真冬の寒い日のことだ。
「良い子で待っててね」
そう言って中へ入っていく母親を見送った私は、降り積もった雪を見ながら今日は何して遊ぼうかと考えていた。
___…そうだ、雪だるまを作ってお母さんに見せてあげよう。
そう思い立つなり私はその場にしゃがみ込み、ピンク色の小さな手袋をつけたまま雪を手に取った。
「…つめたっ」
手袋の上からとはいえ、ずっと持っているのに耐えられなかった私は、休憩を挟みながら少しずつ大きくしていく。
漸く下の部分が完成したとき、
「ねぇ、」
いきなり後ろから声を掛けられ驚いた。
今までこのお屋敷で誰にも会ったことがなかった私は、首が取れてしまうんじゃないかという勢いで振り返った。