ストーカーさんをストーカーしてみた。
二日目、ストーカー始めます。
翌日の放課後、全速力で隣町のとある高校に向かう。
ゆりの転校先の学校だ。
帰国子女や留学生を幅広く受け入れている高校らしく、ゆりもすんなり転校できたそう。まぁ頭脳明晰なゆりさんなら当然だけど。
同じ県内だからか、昨日よりは迷わず辿り着くことができた。
私の通う高校よりも遥かに綺麗で遥かに大きい校舎を前にして、思わず感嘆の声がもれる。
「はぁ……。」
「本当に綺麗ですよねぇ。」
「はい、もうさすがゆりというか──────って、
え?」
反射的に返事をしてしまったが、この状況は明らかにおかしい。
さっきまではひとりだったはずだ。
なのに、何故。
「天野さん!?」
「こんにちは、また会いましたね。」
思わず数歩後ずさりをするが、天野さんは依然として王子様スマイルを絶やさない。
なんて神出鬼没……!
ていうか天野さんのストーカーするためにここに来たのに、バレちゃ意味ないし!
「幽霊か何かですか……?」
「何言ってるんですか、人間ですよ。
三度の飯より百合香さんなだけです。」
「だからってこんなにタイミング良くっ……!」
「小森さんより百合香さんに会いたいんですけどね。」
「それ言う必要なくない!?」
ちょいちょいバカにしてくるのはもう置いておくとして。
どうしよう、これじゃ来た意味ない。
「今日も百合香さんのボディーガードですか? 結構なことで。」
「あなたがいるからこの仕事任されたんですけど。」
とにかく、まだ任務続行中だと誤魔化そう。
ご苦労ですね、と鼻で笑う天野さんの脇腹に思わず拳を突き入れるが、難なくかわされてしまう。
「まだまだです。そんなんじゃ私から百合香さんは奪えませんよ。」
「ストーカーごときがほざくな!」