ストーカーさんをストーカーしてみた。
キーンコーンカーンコーン……
突如鳴り出すチャイムの音に、私は咄嗟に校門から離れた電柱の影に身を潜める。
ゆりに気づかれては本末転倒なのだ。
そしてこのストーカーも同様電柱の───────いや、私の背中に隠れた。
「ちょっと、天野さん!」
声を潜めて背後の天野さんを睨むと、彼も怪訝そうな目で私を見る。
「なぜあなたが隠れる必要があるんです?」
うっ。
質問に質問で返されたことに腹が立つが、さすがストーカー。鋭い。
「き、今日はゆりには内緒でボディーガードしてるんです。
あなたがゆりに近づかないようにするために!」
天野さんは納得したように頷くが、すぐにまた眉をひそめる。
「じゃあストーカー仲間ってことですか?
あなたはあくまで百合香さんのご友人だから近づいただけで、仲間になるまで仲良くはしたくないんですが。」
「大丈夫ですよ。
あなたと仲間になるつもりは毛頭ないんで。」
「そうですか! 安心しました。」
つくづく失礼な男だな……。
私と会話しながらも、視線はしっかり校門に注がれている。
ゆりが出てくるまで1ミリも動かないつもりだろうか。
ストーカー、恐ろしい……。
この男は本当にここまでして探るほどの価値があるんだろうか。
本当に何の秘密もないただのストーカーって可能性も……。
と、そこまで考えて、後ろの妙に荒い息遣いに気づく。
気味悪く思いながら振り向くと、真っ赤な顔をした天野さんが。
「ど、どうしたんですか……。」
若干引きながら問いかけると、天野さんはぽつり。
「百合香さんがこの学校で過ごしていると思うと、興奮しました。」
だめだ。
たとえ素性を探る必要がないただの変態だったとしても。
この男を放っておいたら、ゆりが危ない……!