ストーカーさんをストーカーしてみた。

キーンコーンカーンコーン……



突如鳴り出すチャイムの音に、私は咄嗟に校門から離れた電柱の影に身を潜める。


ゆりに気づかれては本末転倒なのだ。



そしてこのストーカーも同様電柱の───────いや、私の背中に隠れた。





「ちょっと、天野さん!」




声を潜めて背後の天野さんを睨むと、彼も怪訝そうな目で私を見る。




「なぜあなたが隠れる必要があるんです?」




うっ。

質問に質問で返されたことに腹が立つが、さすがストーカー。鋭い。




「き、今日はゆりには内緒でボディーガードしてるんです。

あなたがゆりに近づかないようにするために!」




天野さんは納得したように頷くが、すぐにまた眉をひそめる。




「じゃあストーカー仲間ってことですか?

あなたはあくまで百合香さんのご友人だから近づいただけで、仲間になるまで仲良くはしたくないんですが。」




「大丈夫ですよ。


あなたと仲間になるつもりは毛頭ないんで。」




「そうですか! 安心しました。」





つくづく失礼な男だな……。





私と会話しながらも、視線はしっかり校門に注がれている。

ゆりが出てくるまで1ミリも動かないつもりだろうか。



ストーカー、恐ろしい……。



この男は本当にここまでして探るほどの価値があるんだろうか。

本当に何の秘密もないただのストーカーって可能性も……。



と、そこまで考えて、後ろの妙に荒い息遣いに気づく。

気味悪く思いながら振り向くと、真っ赤な顔をした天野さんが。




「ど、どうしたんですか……。」




若干引きながら問いかけると、天野さんはぽつり。




「百合香さんがこの学校で過ごしていると思うと、興奮しました。」




だめだ。


たとえ素性を探る必要がないただの変態だったとしても。





この男を放っておいたら、ゆりが危ない……!
< 11 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop