ストーカーさんをストーカーしてみた。
ゆりの話すストーカーさんの特徴は以下の通り。
・伸ばしっぱなしのボサボサな黒髪
・180cm以上はありそうな長身
・常に猫背
・高い頻度でマスク着用
「つまりクソほど怪しいってわけか。」
「そうなのよー。」
はぁ、と大きくため息をつくゆりに眉をひそめる。
ため息つきたいのはこっちなんだけど。これを尾行しなきゃいけない私の方がキツいんだけど。
しかしゆりがこの男に毎日悩まされているのも事実らしいし、生憎大切な親友をストーキングするような奴を放っておけるようなタマではない。
「ゆりを尾行するコイツを監視して、止めればいいんだよね?」
「うん。あ、だけどだけど、気をつけてね?
いくら空手全国一位だからって、相手がこんな高身長の男じゃ危険だから。」
じゃあ頼むなよ!
とは思ったものの、自分の力は自負している。例え相手が男であろうと、ちょっとやそっとでやられるようなことはないはずだ。
私が空手の競技で全国一位を毎年獲得しているからこそ、ゆりも私に頼んだのであろう。
力を認められた手前断るわけにもいかない。プライドだ。
「分かってるって。でもどうせその男、ヒョロヒョロでしょ?
そんな弱々しいストーカーに負けるわけないじゃん。」
「そうだけどぉ。」
まだこの時は疑う余地もなかったのだ。
その“弱々しいストーカー”に、私が手を出せなくなるなんて。