ストーカーさんをストーカーしてみた。
一瞬、男が何を言っているのか理解出来なかった。
ストーカーって普通コソコソ隠れてやるもんじゃないの? なに堂々と事務所の前で待ち伏せしてんの!?
その上ストーカーが自ら申告してくるとか、予想外すぎて。
そんな私の心中を察することなく、男は一歩下がって片手を差し出した。
「百合香を見守る者同士仲良くしましょう。」
あまりにも斜め上をいく発言に呆気にとられながら、私はその手を凝視する。
この手を握れというのか? 友達のストーカーと握手をしろと?
どう考えてもおかしい!
「えーと……あなたは、ゆりのストーカー……なんですよね?」
「はい。ゆりって呼んでるんですね。」
情報入手、と小さく呟いたのを全力で聞き流して、質問を続ける。
「何故私に申告を?」
「お友達なら挨拶しておかなければと。」
「なにそのポリシー……。」
おかしい。こいつは狂っている。
そもそもストーキング行為が犯罪だということをわかっているのか?
「それにしても、警察に通報するのではなく暇を持て余すお友達に相談するとは、さすが百合香さん。心がお広い!」
あれ? 今さらっとバカにされた?
「え、あ、あの、あなたがしてることが犯罪だっていうのは……?」
男は首を傾げて不思議そうな顔をしたのち、くすりと上品に微笑んだ。
「おかしな人ですね。そんなの常識じゃありませんか。」
いやいやおかしな人そっちだから。私は正常だから!
なにこの人。ぶっ飛びすぎてついていけない。