ストーカーさんをストーカーしてみた。
「っていうか……天野?」
私が首を傾げると、天野さんは「はい!」と目を輝かせる。
「偶然同じ苗字なんです。俺が百合香さんに惚れたのもそれがきっかけで。」
天野さんの話によると、アメリカで同じ高校に通っていた数少ない日本人であるゆりに「同じ苗字ですね」と笑いかけられたことがきっかけだと言う。
「あの時の百合香さんと言ったら、本当に天使のようでした。あの笑顔をもう一度見ようと何かしら理由をつけて彼女の教室に行ったもんです。」
それが抜けなくて今もストーカーやってるってわけです、と照れながら話す天野さんになんだか拍子抜けする。
後ろめたいなんて言葉を知らないような異常者なのに、恥ずかしいとか照れるとかいう感情は人並みにあるらしい。
まるで王子様のようなキラキラスマイルを見せたかと思えば子犬のような目で語り出したりするし……謎だ。
「小森さんは百合香さんの同級生でしたよね。
小学生の百合香さんってどんな方だったんですか?」
「い、いや……教えるわけないじゃないですか。」
「なぜです? 変なことには使いませんよ?」
「個人情報を探ってくる時点でアウトなんですよ!」
「?」
なんっで分かってくれない!?
本当に人間なのかこの人? もういっそのこと宇宙人とかだったらまだ納得できるんだけど。
「お願いします、教えてください。
……あ、安心してくださいね。小森さんの可愛げのない小学生時代なんて一切興味ありませんから!」
「なんでちょいちょい侮辱すんの!?」
「いや……百合香さんのことを探ると見せかけて自分のことを探っていると痛い勘違いしているのかと……。違うんですか?」
「私のことどんな人間だと思ってんですか……。」
どうやらこの人は、本当にゆりしか興味がない。そしてそれ以外の人間はクズ中のクズだと思っているようだ。