秘密の視線
ずっと大好きだった幼なじみ。

隣の家に住む彼は、昔から姉に想いを寄せていた。

そんな彼の想いに気付かない姉にどうしようもない苛立ちが募り、利用しても良いからと関係を持ちかけたのは私。

やっと彼の想いが成就して、結婚すると聞いた時には胸が張り裂けるかと思った。


「みっちゃんの顔見てるだけで泣いちゃいそう」

「なに、言ってるの」

「葉月、式はこれからなんだぞ」

「うん、そうよね…」


両手を握り占め、緊張しているのかソワソワしている姉を見ていると、息が苦しくなる。

姉のことは大好きだし、大事に思っているのに、

この二人が並んでいるのを見るだけで胸が詰まりそうだ。


彼の視線は姉に釘付けで、わたしにそれが向けられることはなくて。


『美月、綺麗だ…』


あの夜、彼が私だけに向けて言い放った言葉をもう一度聞きたいと願う。


姉の代わりでも良かった。
ただ、好きな人に抱かれたかった。


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