午前0時、魔法が解けるまで。-ラブ♡スキャンダル-
「あらあら、良いタイミングで王子様のお迎えだわ」
北原さんが笑って、薫くんとは目を合わせずに呟いた。
「私を振ったんだから幸せになりなさいよ」
嘘も偽りも、取り繕いもないその言葉に胸が締め付けられる。
思わず謝罪の言葉を口にしかけて――その口を、塞がれた。
「可愛い子ね。むしろ私が欲しいくらいだわ」
そう言って私から離れた北原さんが、艶っぽく自身の唇を舐め上げる。
「………………………………………え?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
確かに唇に残る柔らかい感触と、微かに感じる化粧品独特の味。
自分では状況を理解できず――したくなかっただけかもしれない。
口元を手で押さえて薫くんを見上げると、薫くんは表情の抜け落ちた顔のまま固まっていた。