どうも、うちの殺人鬼(カノジョ)がお世話になってます。


「はい」


素直に私は先に後部座席に座った。

けど、時流様は一向に座る気配が無い。

ポケットに手を突っ込んで、車と蝶野さんをジロジロと訝しげに見つめてる。


「時流様?どうなさいました?」


蝶野さんは運転席から顔を出して、動かない時流様に乗車を促した。


「……蝶野」

「はい?」

「お前、蝶野じゃないだろ」


グオンと頭に響くような低く大きな声で、時流様は言った。

え?

何を仰るの?

フレームの細い眼鏡、執事らしい細長い身体、きっちりとした髪……

どう見ても蝶野さん。


「蝶野は市木の事は『小紺様』じゃなく『市木さん』呼びだ。あとあいつは電子煙草しか吸わないし、右利きだ」


あ……

この蝶野さん……左手に火がついたスーリア(イタリアのブランドの煙草。煙草の王様とも言われている)を持ってる。
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